【過失割合大逆転】刑事裁判で無罪となった加害者に、民事裁判で6割の過失を認めさせる!

事故の内容
被害者の男子高校生は、友人と自動二輪車で交差点を直進しようとしたところ、交差点を右折してきた自動車に轢かれ、頭に大怪我を負い、意識不明となりました。
その後、被害者の意識は回復したものの、事故状況を覚えていないという状況になりました。
加害者は、自動車運転過失傷害罪(現在の過失運転致傷罪)で起訴され、刑事裁判になりました。
加害者は刑事裁判で無罪に
刑事裁判で問題となったのは、被害者の自動二輪車の速度でした。
加害者側は、被害者は時速100kmを超える速度で走行していたと主張していました。それは、加害者に有利な第三者の証言があったからでした。その第三者は、被害者が事故現場の460メートル手前の交差点で、赤信号で停止した際、後ろに付いた後続車の運転手でした。
「被害者は、事故現場の460メートル手前の交差点の信号が変わると高速で発進し、自分が発進する時点ではかなり遠くにいた。 自分の車が発進して、時速80km程度に達した後もぐんぐん離されていった。したがって、被害者は時速100km以上出していたと思う。」 とのことでした。
被害者と一緒に走っていた友人は、「確かに時速70~80kmは出してしまったかもしれないが、そこまでの速度違反はしていない。」と証言しましたが、高校生の証言はあまり信用されることはありませんでした。
裁判所は、後続車の運転手の証言を信用して、加害者を無罪にしました。
民事裁判へ
保険会社は、刑事裁判で加害者が無罪になったことで強気になり、保険金を支払わないと主張しだしました。そこで、被害者のご両親は、リンクスの弁護士に依頼をされました。
リンクスの弁護士は、民事裁判の中で過失割合を徹底的に争うことにしました。過失割合を逆転するためには、後続車の運転手の証言を覆す必要がありました。そこで、次のような証拠を集めることにしました。
- 速度鑑定の依頼
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保険会社は、民事裁判の中で、被害者が時速100kmを超える速度で走行していたことを示す鑑定を提出してきました。そこで、被害者側として独自に鑑定を依頼し、被害者の自動二輪車は時速80km程度であったと考えるのが自然であるとの意見をもらいました。
- 独自の文献調査
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リンクスの弁護士は、独自に文献を調査することにしました。その結果、赤信号待ちをしている車が発進するまでにかかる時間は、先頭の車と後ろについた車で5秒以上の差がかかることが明らかになりました。
これで、後続車の運転手が発進する時点で、被害者の自動二輪車がかなり遠くにいたのは、後続車が発信するのに時間がかかったからにすぎないことを明らかにしました。
- 後続車の運転手の証言の弾劾
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そして、肝心の後続車の運転手の証言については、次の理由から、信用できないことを明らかにしました。
- 460メートル手前の交差点で被害者の自動二輪車を見ていただけで、事故の瞬間を見ていたわけではないから、後続車の運転手には、事故の瞬間の被害者の速度は分からない。
- 後続車の運転手は、刑事裁判で「自分の車が時速80km程度に達した後もぐんぐん離されていったから、被害者は時速100km以上出していたと思う。」と証言したが、事故直後の取調べでは時速60~70km程度で走行していたと供述しており、 供述が移り変わっていて信用できない。
裁判の結果
この裁判は、高等裁判所まで争われましたが、地方裁判所も高等裁判所もリンクスの弁護士の時速80kmの主張を全面的に採用しました。
時速80kmであっても制限速度を30km超過しているため、被害者側に4割の過失は認められましたが、刑事裁判で無罪になった加害者に6割の過失を認めさせることに成功しました。